「時間が微妙に昼に掛かるから、軽食くらいあるんじゃない?」
自宅で軽く食べて来たKさん。
それ以外の二人の希望で、何か腹に納めようと、和食レストランに入って、おにぎりと味噌汁のセットを注文。
なぜかKさんも注文。
軽く食事をしつつ、今日の現地での行動を打ち合わせ。
待ち合わせロビーでは、マレーシアに向うらしいじーさんが、仲間と声高に、どこかでバイアグラを取り上げられた話をしている。
じーさんの武勇伝に聞き耳を立てている内に、搭乗時間が来た。
CAの美しさに目を奪われる。
伝統のチャイナドレスを基本とし、動き易さを考慮したスカート丈。
スタイルの良さを際立たせるフォルムと、淡い小豆色の組み合わせが何とも言えず美しい。
ああ美しい。二回言いました。
定刻通りの離陸。
CAの一挙手一投足に目を奪われていると、横からいきなりヌッと、柔道選手の様な顔が視界にカットイン。
何事?!
CA(男)「カツドンとビーフカレ、どちらにしますか?」
男もいたのか。
いや、そうじゃない。
おい!軽食じゃないぞ!
ざわとした心を隠しつつ、他の二人と素早くアイコンタクト。
堅苦しいことや、面倒くさいことは無しにしよう、と話していたこの旅。
1つだけ決めたルールが有った。
出て来た物は食う。
Kさんは、自宅で朝食を食べて来ており、我々に付き合って空港ターミナルビルのレストランで、握り飯と味噌汁を食べた。
この機内食で既に三食目だ。
まだ昼前だというのに。
先程のアイコンタクトは、それの無言の確認だった。
いけるか、と。
旅が始まるぞ、と。
私「カツ丼ください」
I君「ビーフカレー」
Kさん「…ビーフカレー」
しかし、機内食のトレーに、生クリーム付きのガトショコラがデザートとして付いてくることを、医者から甘いものを制限されているKさんは、この時は知る由も無かったのである。










